シニア調査の必要性と勘所とは?
調査のエキスパート・梅津所長に聞く!

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ハルメク「生きかた上手研究所」梅津所長

高齢化が進行するなか、シニア女性の価値観や嗜好を把握することが、マーケティングを行ううえでますます重要になってきます。この記事では、シニア調査のエキスパートであるハルメク「生きかた上手研究所」の梅津所長に、シニア調査の必要性やポイント、コロナ禍がシニア女性の意識・生活にもたらした変化などについて聞きました。

ハルメク「生きかた上手研究所」とは

―はじめに、簡単な自己紹介と「生きかた上手研究所」について教えてください。

梅津:
生きかた上手研究所の梅津と申します。2016年3月から所長を務めております。
年間1,000人近くのシニア女性を対象にインタビューや取材を行い、誌面づくりや商品開発・広告制作に役立ててきました。

生きかた上手研究所は、ハルメクのサービスに関するマーケティングや調査、コンサルティングを行うシンクタンクです。ハルメクモニター(通称:ハルトモ)の皆様へのインタビューやアンケートを通じて、シニア女性の潜在的なニーズやリアルな声を探っています。
こうした調査を通して、今まで見過ごされてきたシニア女性のインサイトを見出すこともよくあります。

たとえば、2年ほど前、雑誌「ハルメク」で介護に関する特集を組んだことがありました。これまでは親や夫を介護することを想定した記事を作っていたのですが、調査すると、シニア女性は自分が介護されるときの心配をしていることがわかりました。
自分が介護される側になったとき「子供に迷惑をかけたくない」という気持ちが強いということです。こうした思いに沿って、ご自身の将来の入院・介護に関する特集にしました。

シニア女性の価値観は若い女性とそれほど変わらない

シニア女性の特徴は、「若々しい心」と「低下してくる体力」のギャップ

―続いて、マーケティング対象としてのシニア女性の特徴についてお聞きします。近年のシニア女性の価値観や嗜好には、若い女性と比較してどんな特徴があるのでしょうか?

梅津:
シニア女性の価値観や嗜好は、実は若い頃とあまり変わりません。気持ちはまだまだ若いんです。平均寿命が年々延伸し、まだ老い先も長いですから、終活などを後回しにしている方も多いです。

しかし、若々しい価値観や嗜好に体が追い付いていない面もあります。平均寿命は女性では87.74歳ですが、健康寿命は74.79歳(※1)です。長生きはしているけれど、体が追い付いていないということです。
実際に、60歳ごろから「老眼でスマホ画面が見えにくい」、「もの忘れが増えた」という心と体のギャップが生じてきます。
このギャップをいかに埋めていくかが課題です。生きかた上手研究所はそのギャップをつかんで、解決策をどのように提示していったらよいかを常に考えています。

※1 平均寿命出展:厚生労働省「令和2年簡易生命表」
   健康寿命出展:内閣府「平成30年版高齢社会白書」


―平均寿命が延びているなかで、シニア女性をひとくくりにしてよいのでしょうか?また区切るとしたら、どう区切ったらよいと思われますか?

梅津:
おっしゃる通り、「シニア女性」でひとくくりに考えない方が良いと思います。厚生労働省は、幼年(0~4歳)、少年(5~14歳)、青年(15~29歳)、壮年(30~44歳)、中年(45~64歳)、高年(老年)(65歳以上)という年代区分を示していますが、人生100年時代のこれからは新しいくくりを考えるべきです。現代の60代は若いですからね。
定年延長や再雇用、年金受給開始年齢の引き上げなどの動きが起きているなかで、65歳以上の区分を「老年」とひとくくりにしていることには違和感があります。65歳を過ぎても家族の中心的な存在で役割も多く、ずっと働き続けている方も珍しくありません。ゆっくり老後を過ごしてお迎えが来るのを待てばいい、という時代ではなくなっているということです。加えて、孫育て等、家族の世話から引退できないこともよくあります。

一方で、一時期あったような「生涯現役でいたい!」「元気全開」というニュアンスは弱まっています。いつまでも引退できないという状態が続いているので、「気負わない、ほどほど感」、「無理せず体力を温存」という傾向になっています。

大事なのは、個々人を年齢の区切りではなく、価値観でみることです。ハルメクでは、価値観や嗜好、消費行動などから、シニア女性を7つの価値観タイプに分け、このうち好奇心旺盛で社交的なタイプなどのターゲットに絞り込んでマーケティング施策を行っています(詳細については下記の記事参照)。

雑誌「ハルメク」を成功に導いた「クラスタ分析」とは?シニアマーケティングに役立つ、その分析手法を解説

そのほかにも、家庭状況や就業状況などのライフステージやライフコースなど、様々な視点から顧客を分析しています。

マーケティングを考える上で知っておくべきシニア女性のマインド

―では、生きかた上手研究所が考えるシニア女性マインドとはどのようなものでしょうか?また、それを捉えるために企業側が注意すべきことは何でしょうか?

梅津:
シニア女性のマインドは日々変化しています。「シニアはこうだろう」と決めつけないことが大事です。
代表的な例がデジタルに関する意識変化です。「ワクチン接種の予約」「キャッシュレス決済」など、社会全体でデジタル活用が必要となっています。シニア女性はデジタルリテラシーが低いから、「デジタル社会についていかなきゃ」、「使い方を覚えなきゃ」と思っていると解釈しがちですが、それだけでは表層的です。その根底にどんなマインドが潜んでいるのかを把握する必要があります。
シニアにおけるデジタルシフトの背景には、「知らないために損をしたくない」という気持ちがあると見ています。世の中の時流や変化についていけないと損をしてしまうのではないか、というマインドです。シニア女性は、「申請して戻ってくるお金があるのなら今後のために知っておきたい」、「老い先が長いから、年金や介護制度の更新情報は知っておかないと損」と思っているのです。
そのため、ハルメクでは「スマホ」「インターネット」「年金」といった特集を組み、社会情勢や時事ネタを交えながら、「今を生き抜くコツ」を紹介しています。「ちょっぴりお得」といったぐらいの情報を盛り込みながら、「知らないで損したくない」というマインドをくすぐっているわけです。

生きかた上手研究所が考える、
シニア調査の企画・実施におけるポイント

シニア調査の手法と実施するうえでのポイント

―続いて、シニア調査の手法と実施するうえでのポイントについて教えてください。

梅津:
シニアリサーチでは定量調査と定性調査、どちらも行っています。
定量調査とは、定点観測調査や意識・実態調査のことです。具体的には、ブランド浸透調査や雑誌の満足度調査の他、消費、家族、お金、デジタル、終活、災害、健康などをテーマに実施しています。
定性調査としては、ニーズ探索などの仮説発見型の調査、コンセプトの受容性など検証型の調査を行っています。なお、ハルメクではコロナ禍で対面インタビューをすることが難しくなったため、「オンライン座談会」を開発しました。オンライン座談会の活用により、都市部だけではなく、地方部在住の方に対しても定性調査を実施することが容易になりました。

コロナ禍でもシニアのニーズをキャッチ!「オンライン座談会」で顧客のインサイトを探る

実施するうえでのポイントは2点あります。
1つは読者であるシニア女性を尊重することです。人生の先輩に対して調査をするので、これは当たり前です。
もう1つは目的と課題を明確にすること、そして仮説をしっかりと立てることです。目的と課題を明確にしなければ調査の意味がないですからね。調査設計の際は仮説を立てますが、思い込みにつながることがあるので、実査時はその仮説を一旦捨てます。仮説がバイアスとなって質問内容や聞き方に影響するのを避けるためです。
回答内容にバイアスがかからないように、聞く順番にも注意しています。また、「~について賛成ですか?」というように答えが限定されるクローズドクエスチョンではなく、オープンクエスチョンの方が、回答者からより多くの情報を引き出せます。たとえば、「~についてどう思いますか?」といった聞き方です。

ハルトモの力でより深い調査が可能
~生きかた上手研究所による調査の強み~

―生きかた上手研究所が提供する調査サービスの強みは何でしょうか?また、企業の要望に沿った深い調査ができる理由はどこにあるのでしょう?

梅津:
1つは3,500人(※2)の「ハルトモ」の皆さまのご協力によって、深い調査が可能という点です。
ハルトモは、好奇心旺盛なシニア女性から成る「ハルメク」のモニター組織です。「ハルメク」の雑誌、通販商品、サービス開発などを一緒に創り上げる際になくてはならない存在といえます。
ハルトモは、自分の思いを言葉にするのが得意なので、率直な意見や新たな視点がどんどん出てくるのが強みです。

※2 記事作成の2021年11月29日時点において。

もう1つ、単なる調査にとどまらず、商品の共同開発までできるところも強みといえます。
具体例として、メガネトップ様との案件があります。メガネトップ様には高齢層に向けた商品があるものの、ニーズと合っていないのではないかという課題をお持ちでした。そこで、60歳以上の女性をターゲットにした商品開発をすることになりました。
商品開発のために、ハルトモに定量調査と、定性調査を実施しました。眼鏡に対する意識と実態を確認したところ、「顔なじみがいいメガネ」を求めていることがわかりました。顔なじみとは、今の自分に合うかどうかです。
調査を重ねながら試作品をブラッシュアップしていった結果、「今の私に似合う眼鏡【アイグレース】」という商品が生まれました。こちらは11月10日に発売を開始しています。

眼鏡市場ホーム ハルメクと共同開発「Igrace(アイグレース)」

生きかた上手研究所がつかんだ、
コロナ禍によるシニア女性の意識動向・生活動向の変化

―生きかた上手研究所では、これまで複数回にわたりコロナ禍でのシニア女性の生活や意識について調査を行っていますが、コロナ前と比較してどのような変化が起きているのでしょうか?

梅津:
主に3つの変化が挙げられます。
1つ目はデジタルシフトで、これが一番大きな変化です。自粛生活が長期化したことなどにより、支払いや決済をはじめ、さまざまな場面でネット・オンラインの利用意向が拡大していることがわかりました。
2つ目は、時間をどう使うかという意識の変化です。コロナ前は「アクティブシニアでいなければ」というように、気持ちが外に向かう傾向があり、家で過ごすことにあまり良い印象を持たないシニア女性も多くいました。
でも、この1年で「家が嫌いではないことに気づいた」というコメントを何度も聞くようになり、おうち時間に対する考え方が変わったように思います
3つ目は、免疫機能を高めるといった健康意識の増進です。マスクや手洗いなどその場その場での「守る」対策だけではなく、体力をつけよう、免疫をつけようという「攻め」の健康意識も強まりました。
たとえば、高額なサプリメントを買ったりウォーキングを始めたりといった取り組みがみられました。

―最新の動向として注目していることはなんでしょうか?

今後、感染状況の落ち着きにともない、「おでかけ」に関するニーズが強まるのではないかと予測しています。例えばおしゃれの領域。「久しぶりの外出に何を着ていいか分からない」、「自分のメイクの仕方は古いのではないか」という疑問や不安が出てくることが予想されます。このため、「ワンツーコーデ(トップとボトム各1アイテムで完成するコーディネート)」「何だか素敵なキレイめカジュアル(浮かないけど自分がすてきにみえる服)」の提案などが求められていくのではないかと予測します。

―これまでの調査で、変化が見られたものは何かありますか?

生きかた上手研究所では、2020年3月と同年7月、2021年6月に、「新型コロナウイルスに関する意識調査」のなかで、コロナが終わったらどうしたいか尋ねました。
1,2回目の調査では「マスクを外したい」という意見が多かったのに対し、3回目では「マスクは外したいと思わなくなってきた」という意見に変わってきました。様々なおしゃれマスクがこの数年で登場し、ファッションの一部になってきていることの他、マスクをつけるメリットが現れるようになってきたためと見ています。化粧をしなくていいですし、「口もと(ほうれい線など)が隠れるマスクはむしろ都合がいい」ということに気づいたのです。風邪やインフルエンザの予防にもなります。
また、人とのつながりを求めるようにもなってきました。具体的には、友達や家族と外食・旅行がしたいという気持ちが大きくなってきたことがデータで示されました。
生きかた上手研究所ではこれからも、社会情勢の変化にともないシニア女性の価値観、生活実態がどのように変わっていくか、さまざまな視点から観測し、発信していきます。

【ハルメク独自リサーチ】コロナ禍でのシニア女性の生活と意識実態調査2021

この記事では、生きかた上手研究所の梅津所長に、シニア女性の価値観やシニア調査のポイントなどを解説していただきました。
このようなシニアのインサイトを知りたい方は、生きかた上手研究所におまかせください。
生きかた上手研究所では、ハルメクモニターとのつながりを起点に、コンテンツ・商品・サービスの開発につなげています。調査の企画・立案~施策・プロモーションプラン策定~御社の意思決定~次のアクションまでを視野に入れ提案いたしますので、下記よりぜひお問い合わせください。

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