シニアは国産好き!? 決めつけてはいけないその理由【シニアマーケ最新レポート第1回】

(株)ハルメクホールディングス 生きかた上手研究所所長 梅津が、「ハルメク」の日々の調査やインタビューから感じたことを徒然なるままに語る、連載コラム第一回。
これまでハルメクでは、「シニアは国産好き」という絶対的な価値観をもとに商品開発を行ってきましたが、最新の調査ではそんな心理に微妙な変化が見えてきたとか。今回は、そんなシニアの食に対する価値観の変化について語ります。

目次

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70歳が“国産好き”の別れ目!?

シニアマーケティングに長く携わっている方は、「シニアは○○」といったたくさんの知見が溜まっていることと思います。
ハルメクでは、「シニアは国産好き」というのがそのひとつ。実際にハルメクの通販では、商品が国産であることが長いこと重要なポイントでしたし、こだわりでもありました。
しかし、ハルメクで最近行った食品に関するグループインタビューでは、この「シニアは国産好き」に微妙な変化が生じているとわかってきました。

その価値観のおよその区切りとなる年齢が、70歳。
70代の方は、相変わらず国産絶対主義と言って良いでしょう。できることなら食材・食品すべてを国産で揃えたいと考えているようです。

ですが、60代(特に前半)となると少し様子が違います。
「もちろん国産が良いとは思うが、そうは言っても全部国産にするのは無理」という前提をもとに、例えば、「鮭はロシア産やノルウェー産ならOK」、「牛肉はオーストラリア産やアメリカ産ならOK」など、食材と産地を限定しつつ、国産にこだわらない思考が見え隠れします。
いずれもセレクトの基準は「おいしい」こと。一度は外国産を試してみて、おいしくなかったらそれを教訓とし、二度と買わないという行動が一貫していました。

ジャンクフードも! 食の多様性がもたらす価値観の変化

では、その根底となる心理にはどんな違いがあるのでしょうか?

それは、若いころに食べた食習慣が起因していると考えます。味覚は体験で形成されるもの。60代の方が、食がより多様化した時代を生きてきていますから、味覚の幅が広いのが特徴。そのため、素材本来のおいしさのために国産を求める傾向にある70代と比べて、60代はさまざまなおいしさを求めているようです。

実際にグループインタビューでは、多国籍料理を食べる機会が多かったり、「たまにファストフードに行ったり、カップ麺もやっちゃう(笑)」といった意見もありました。
ジャンクフードのご意見には私も驚きましたが、「毎日食べなければいい」とうまくバランスをとっているようです。
おいしさを食材に求めるか、食品に求めるか、「おいしさ」の意味が年代によって違うということかもしれません。

そんな60代の食の寛容さが、これまでのガチガチだった国産主義をちょっぴり緩め、「国産が一番いいけど、おいしければ他でもいいんじゃない?」という思考につながっているといえます。

これまでのシニア知見にとらわれない商品開発を

ちなみに、食の寛容性の違いでわかったことがもうひとつ。
外食(主にランチ)を楽しむのは60代も70代も同じですが、外食のパターンが決まっているのが70代。新しいお店の発掘や食べたことがないメニューへのチャレンジなどおいしいものへの選択の幅が広いうえ、作れそうなものは家で作ってみようなど、料理の視点でも幅があるのが60代でした。

総じて「シニアの食はこうあるべき」といった決めつけは、今後のシニアの購買活動に合わない可能性があります。国産だけでなく、例えば「年寄りなんだから味の薄いものを」といったおしつけも危険です。

これからのシニアは若いころのおいしい味覚体験によって舌が肥えていますし、選択肢が広い。商品開発においてもシニアの嗜好やシチュエーションに合わせるのが、より難しくなっていくかもしれません。味や形状など、よりたくさんのバリエーションも必要になるでしょう。

例えば宇宙食や昆虫食(!)など、60代の興味がどこまで広がるかまだ見えていませんが、商品開発の場において、シニアの食への価値観が少しずつ変化してきていることを頭の片隅においてもらえれば幸いです。

梅津順江

株式会社ハルメク 生きかた上手研究所所長
大阪府生まれ。杏林大学社会心理学部卒業後、ジュジュ化粧品(現・小林製薬)入社。ジャパン・マーケティング・エージェンシーを経て、2016年3月から現職。主に50歳以上のシニア女性を対象にインタビューや取材、ワークショップを行っている。著書に、「この1冊ですべてわかる 心理マーケティングの基本」(日本実業出版社)などがある。

生きかた上手研究所では、企業のリサーチ・分析、リリース作成等をご支援しています。詳しくは、ハルメク・エイジマーケティングまでお問い合わせください。

この記事の監修者プロフィール

生きかた上手研究所

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ハルメク生きかた上手研究所は、雑誌「ハルメク」の全月刊誌販売部数No.1達成(※)を支えた社内シンクタンクです。「ハルメク」から生まれた4,500人を超えるハルメクモニター(通称:ハルトモ)とのつながりを起点に、コンテンツ・商品・サービスの開発につなげています。

※日本ABC協会発行社レポート2023年1月~6月

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